「宇宙葬」「バルーン宇宙葬」「ロケット宇宙葬」 近年、散骨の方法としてこのような言葉が認知されるようになりました。 この記事では、気になる「宇宙葬」の概要・費用・バルーン葬との違い・評判・メリット・デメリットなどを徹底的にまとめていきます。 |
目次
宇宙葬とは
宇宙葬とは、故人の遺灰が入ったカプセルをロケットで宇宙まで運んで、宇宙空間で散骨する葬送法のことです。
国際航空連盟は、地上から100kmを宇宙空間と大気圏の境界線(カーマン・ライン)としています。
よって、宇宙葬では高度100kmより上の宇宙空間まで、遺灰を詰めたカプセルをロケットで運んでいくことになります。
世界で初めての宇宙葬は1997年4月21日に行われたと言われており、アメリカの人気SFテレビドラマシリーズ「スタートレック」の製作者であるジーン・ロッデンベリー氏など、計24名分の遺灰の打ち上げに成功しています。
表①→宇宙葬では、高度100km以上の宇宙空間まで遺灰をロケットで運ぶ!
識別名 | 参考 | |
外気圏(800〜10,000km) | 宇宙空間(宇宙葬の範囲) | スペースシャトルが飛ぶ高度 |
熱圏(100〜800km) | 大気圏・宇宙空間(宇宙葬の範囲) | |
カーマン・ライン(高度:100km) | 大気圏 | |
熱圏(高度:80〜100km) | ||
中間圏(高度:50〜80km) | ||
成層圏(高度:11〜50km) | バルーン葬の高度 | |
対流圏(高度:0〜11km) | 旅客機が飛ぶ高度 | |
地球 | 地表 |
世界の“宇宙葬”の約2割は日本人が占めている
日本人の中で宇宙葬の人気は高く、Space Service社によると、2007年4月28日にアメリカ南西部ニューメキシコ(New Mexico)州で行われた宇宙葬では、200人中39人が日本人でした。
これだけ世界的シェアが高いのは、日本での「遺体の火葬率の高さ」に理由があります。
例えば、アメリカの火葬率が23.6%(1997年)ですが、日本の火葬率は99.9%と世界一の数字を誇ります。
世界一の火葬率を誇る日本では、必然的に世界一“遺灰”をどのように供養するかの関心が高くなりました。
すると、「墓石の下に埋葬・海洋散骨で海に撒く・樹木葬で樹木の下に埋葬する・手元供養をするためにペンダントに入れて身につける」といった様々な散骨形式を葬儀社が取り入れるようになったのです。
宇宙葬もその一つであり、1997年から徐々に認知されていき、今日のように日本人の中で人気が高まっていったのです。
表②→アメリカで行われた宇宙葬では、200人中39人が日本人!
日本人 | 外国人 | 合計 | |
人数 | 39人(約2割) | 161人 | 200人 |
※2007年4月28日にアメリカ南西部ニューメキシコ(New Mexico)州で行われた宇宙葬(Space Service社)のデータです。
表③→火葬率が世界一高い日本では、“宇宙葬”という散骨への関心が高い!
国名 | 火葬率 |
日本 | 99.9% |
イギリス | 70.4% |
韓国 | 65.0% |
フランス | 26.0% |
アメリカ | 23.6% |
※イギリスは1999年、韓国は2008年、フランスは2006年、アメリカは1997年のデータです。
表④→散骨には様々な種類がある!宇宙葬もその一つ。
散骨 | ①樹木葬 |
②海洋散骨 | |
③バルーン葬 | |
④宇宙葬 |
宇宙葬・バルーン葬・月面葬・空中散骨の違い
「バルーン葬」 「月面葬」 「空中散骨」 |
宇宙葬と似ているこのような言葉を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
ここからは、それぞれの特徴と宇宙葬との違いについてまとめていきます。
バルーン葬とは
バルーン葬とは、巨大なバルーンの中に遺灰を入れて、成層圏まで上げる散骨方法です。
成層圏まで上がったバルーンは熱膨張で破裂し、空中で遺灰を散骨します。
40年以上バルーン事業に取り組んできた株式会社バルーン工房が考案したとされています。
バルーン葬のことを「バルーン宇宙葬」、通常の宇宙葬のことを「ロケット宇宙葬」と呼ぶこともあります。
しかし、バルーン葬は高度100kmのカーマン・ラインを超えないので、厳密に言うと“宇宙葬”とは別物です。
月面葬とは
月面葬とは、東京都新宿区にあるエリジウム・スペース社と、アメリカのアストロボティック社が提携して開発した「月をお墓にするサービス」です。
月着陸船の内部に遺灰の一部を入れたカプセルを積んで、月面まで送って散骨します。
前述した宇宙葬の一種とも考えられますが、散骨先が宇宙空間なのか、それとも月面なのかという違いはありますので、厳密には別物と考えていいでしょう。
空中散骨とは
空中散骨とは、ヘリコプターや軽飛行機セスナなどを用いて、遺灰を空中から散布する散骨方法です。
バルーン葬が遺灰を空中に運ぶためにバルーンのみを使用するのに対して、空中散骨ではバルーン以外にもヘリコプター・軽飛行機セスナなどの手段があります。
空中散骨の一種として、バルーン葬があるということですね。
宇宙葬の値段・費用は最安で“約30万円”
アメリカの宇宙基地からロケットを発射するぐらいだから、費用はとんでもないのでは? |
このように宇宙葬の費用が高額であることを疑う人はたくさんいます。
しかし、意外にも宇宙葬の値段・費用は約30万円ほどですみます。
ここからは、宇宙葬の費用について「ロケット宇宙葬」「バルーン宇宙葬」の2つに分けてまとめていきます。
ロケット宇宙葬の費用まとめ
会社・サービス名 | 宇宙葬の値段・費用 |
宇宙葬Sorae-ソラエ
【出典】宇宙葬Sorae-ソラエ |
285,000円 (※割引適応価格です。) |
銀河ステージ
【出典】銀河ステージ |
|
バルーン宇宙葬の費用まとめ
会社・サービス名 | 宇宙葬の値段・費用 |
バルーン工房
【出典】バルーン工房 |
合計:260,000円〜 |
ストーンアート工業
【出典】ストーンアート工業 |
合計:240,000円〜
合計:80,000円 |
宇宙葬の3つのメリット
①宇宙に行くことができる
宇宙航空研究開発機構 (JAXA)によると、2015年12月時点における日本人の歴代宇宙飛行士の人数は10人となっています。
つまり、1990年12月2日に秋山豊寛さんが日本人初の宇宙飛行士となってから25年の間に、宇宙に行った日本人は「男性8人・女性2人」の計10人だけということです。
日本人の総人口が約1億2,000万人と言われている中で、25年間を通じてたったこれだけの人数なのですから、宇宙に行くことがどれだけ難しいかがよく分かります。
しかし宇宙葬ならば、“死後”というかたちにはなりますが、数十万円ほど支払えば宇宙に行くことができます。
子供の頃の夢は“宇宙飛行士”だった |
男性の場合、このような方は多いはず。
生前に叶わなかった夢を死後に叶えることができるというのは、非常に魅力的なことではないでしょうか。
表⑤→歴代で宇宙に行った日本人はたったの10人!
順位 | 国籍 | 歴代宇宙飛行者の人数 |
1 | アメリカ | 337人(うち女性45人) |
2 | ロシア (ソ連を含む) |
118人(うち女性4人) |
3 | ドイツ (東西ドイツを含む) |
11人(うち女性0人) |
4 | 日本 | 10人(うち女性2人) |
5 | 中国 | 10人(うち女性2人) |
【出典】宇宙航空研究開発機構 (JAXA)などの資料より
②アプリで常にどこにいるのかが分かる
iOS・Androidでダウンロード可能な専用アプリ「エリジウム・スペース」を利用すれば、遺灰を入れたカプセルが宇宙の周回位置のどこにあるのかがすぐに分かります。
宇宙空間に放流された遺骨入りカプセルは、3ヶ月〜数年間の間おだやかに地球を周回します。
エリジウム・スペース社と提携している「宇宙葬Sorae-ソラエ」に限りますが、カプセルが周回している間はいつでも現在位置を確認できます。
「打ち上げて終わり」ではなく、アフターサポートも万全ということですね。
③宇宙という“自由で静寂な空間”に眠ることができる
「あなたは死後にどこで眠りたいですか?」 |
家族が気軽に訪れることができる都市の喧騒のど真ん中にある霊園がいい人
田舎の山奥にある歴史ある墓地で静かに眠りたい人
様々な人がいることでしょう。
宇宙は、束縛やしがらみから切り離された自由な空間です。
また、音の振動を伝える物質がないため、どこよりも静かに眠ることができる空間でもあります。
自分の家族からロケットでの打ち上げという雄大な見送りをされて、その後は自由で静寂な空間に眠る。
そんな他の人とは少し違うかたちで見送ってほしい方には、宇宙葬は非常におすすめです。
宇宙葬の3つのデメリット
①遺灰の回収が不可能
宇宙葬に限らず全ての散骨に言えることですが、一度撒いてしまった遺灰は二度と回収できません。
散骨する遺灰が全体の一部の場合は大丈夫ですが、全ての遺灰を撒いてしまった場合には、その後に後悔することが珍しくありません。
なぜなら、「分骨をしよう」「新しくお墓を作ろう」「遺灰をペンダントに入れて身につけよう」と思っても、肝心の遺灰・遺骨がないからです。
基本的に、宇宙葬などの散骨は墓石施工価格などが一切かからないので、数ある葬送法の中でも最も費用を抑えられます。
「費用が安いから“散骨”にしよう!」 →その後、「やっぱり、お墓を作って埋葬したい」と思って、遺灰の回収を要求 →回収不可能と知り、散骨の依頼先とトラブル |
現在、散骨会社と利用者の間でこのようなトラブルが多発しており、市場から撤退する業者も増えてきています。
宇宙葬を始めとした散骨をする際には、遺灰の一部を手元に残すように気をつけましょう。
②家族の理解を得るのが難しい
「死亡数及び死亡率の年次推移(平成27年) |厚生労働省」によると、死亡者の年齢で最も多い割合は75歳以上です。
75歳以上で亡くなる方の子供は40代〜50代の方がほとんどなので、「墓標となるお墓を作って、その下に遺骨・遺灰を埋葬する」ことを当たり前の常識として持っています。
しかし、宇宙葬は散骨の一種なので、お墓を作りませんし、ましてや地球上に埋葬すらしません。
今まで当たり前と考えていた「お墓を作って埋葬する」という常識からあまりにもかけ離れているため、親族の中には困惑する人も多く出てくることでしょう。
宇宙葬をする際に最も苦労するのは、この「ご家族の理解を得ること」であることは間違いないでしょう。
③ロケットの打ち上げが不定期
基本的に日本の葬儀社が行なっている宇宙葬は、アメリカの宇宙基地と提携して行われています。
よって、宇宙葬が行われるかどうかがアメリカの宇宙会社次第となるので、いつ行われるのかは不定期になってしまいます。
例えば、宇宙葬を主催している「銀河ステージ」という葬儀社では、2018年9月19日に宇宙飛行プランに申し込んだ方の宇宙葬が行われますが、前回の施行はなんと2015年11月です。
また、ロケットの打ち上げは必ずしも成功するとは限りません。
テレビでよくあるように、打ち上げを試みて失敗することも当然起こり得ます。
宇宙葬は、お墓のように即日対応してくれるわけではないので、その点もご家族の方としっかり相談しておく必要があります。
まとめ
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宇宙葬には、「遺灰が残らない」「いつロケットが打ち上げられるか分からない」といったデメリットがあるので、どうしても敬遠されがちです。
しかし、「相場が約30万円ですごく安い」「宇宙に行くことができる」といったメリットもあるので、宇宙への憧れが強い人には非常におすすめです。
子供の頃に「宇宙飛行士になりたい」と思っていたが、大人になってからは普通にサラリーマンになった。
そんな人こそ、宇宙葬という選択肢をご検討してみてください。