「宇宙葬はデブリを増やしてしまうのではないか?」 「そもそも宇宙葬は法律的に大丈夫なのか?」 この記事では、近年話題を集めている宇宙葬について「デブリ問題」「法律問題」の2つを取り上げていきます。 |
目次
スペースデブリとは

宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、スペースデブリとは軌道上にある不要な人工物体のことです。
具体的には、使用済みあるいは故障した人工衛星、打ち上げロケットの上段、ミッション遂行中に放出した部品、爆発・衝突し発生した破片等が該当します。
現在、地上から追跡されている10㎝以上の物体で約2万個、1cm以上は50~70万個、1mm以上は1億個を超える数がデブリとして宇宙に漂っているとされています。
スペースデブリはなぜ問題?

スペースデブリが問題視される理由は、デブリは低軌道では秒速7~8kmで地球を周回しているからです。
これはピストルの10倍以上速い速度で、人工衛星や国際宇宙ステーションに衝突すると、ほんの1cm以上のデブリでも破壊してしまう可能性があります。
宇宙葬はデブリを増やしてしまう?

宇宙葬とは、故人の遺灰の一部を専用のカプセルに詰めて、それをロケットや人工衛星に乗せて打ち上げる葬送法のことです。
バルーンで成層圏まで上げる「バルーン宇宙葬」と、ロケットや人工衛星で宇宙まで上げる「ロケット宇宙葬」の2つがあります。
宇宙に持って行かれた遺灰入りカプセルの多くは、地球の周回軌道上に乗せるため、積極的にデブリを増やしているとも考えられます。
現在、宇宙葬におけるデブリ問題としては、「遺灰入りカプセルや打ち上げ用ロケットが地球に落ちてこないのか」「発生したデブリが宇宙開発の妨げになるのではないか」の2つが挙げられます。
①遺灰入りカプセルや打ち上げ用ロケットが地球に落ちてこないのか
②発生したデブリが宇宙開発の妨げになるのではないか
ここからは、この2つのデブリ問題に対して、どのような対策が行われているのかをまとめていきます。
宇宙葬の2つのデブリ問題の対策は万全?
対策①デブリは大気圏中で燃え尽きるようになっている

地球の周回軌道上に乗せた遺灰入りカプセルは、やがて大気圏に突入して熱で燃えた後に流れ星となります。
この流れ星が隕石となって、地球に落ちてきてしまう危険性はないのでしょうか?
この点に関して、宇宙葬施行会社は万全の対策を行なっています。
例えば、ロケット宇宙葬を行なっているエリジウムスペース社では、記念人工衛星は無害な形で地球の大気圏に再突入し、最終的に流れ星となって燃え尽きるようになっています。
よって、遺灰入りカプセルや打ち上げ用ロケットが地球に落ちて来ることはありません。
Q.宇宙ゴミは排出されますか?
A.いいえ。エリジウムスペースは宇宙環境に配慮しており、宇宙ゴミを生み出しません。弊社の記念人工衛星は無害な形で地球の大気圏に再突入し、最終的に流れ星となって燃え尽きます。
出典:エリジウムスペース
なお、バルーン宇宙葬は、国際航空連盟が定める「宇宙空間と大気圏の境界線(カーマン・ライン)」をバルーンが超えないので、スペースデブリを生み出しません。
対策②そもそもデブリとならないようにロケットを有効活用している

使用済みのロケットや人工衛星を宇宙空間に放流すると、デブリ増加につながります。
しかし、こちらの問題に対しても宇宙葬施行会社はきちんと対策を行なっています。
例えば、株式会社銀河ステージでは、宇宙葬を行う際に有用な人工衛星やロケットにのみを使用し、「いらなくなったから捨てる」といった事態が起こらないようにしています。
よって、宇宙に放棄されたデブリ(ロケットや人工衛星など)が宇宙開発の妨げになることはありません。
Q.宇宙葬は宇宙のゴミを作ることにはなりませんか?
A.銀河ステージではスペース・デブリを極力増やさないため、有用な人工衛星やロケットにのみご遺骨を便乗させており、ご遺骨搭載ボックスのみを軌道上に放擲するようなサービスは一切行っておりません。
出典:銀河ステージ
宇宙葬は法律的に問題ないのか?

日本では「墓地、埋葬等に関する法律」(通称:墓埋法)により「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」と定められています。
この「墓埋法」の重要点は以下の3点です。
「墓地、埋葬等に関する法律」の重要点 ①死亡後あるいは死産後、24時間経たなければ、埋葬も火葬も行なってはならないこと。 ②火葬は火葬場以外で行なってはならないこと。 ③埋葬は墓地以外で行なってはならないこと。 |
ここで、「宇宙への散骨である宇宙葬」が、墓埋法の「③埋葬は墓地以外で行なってはならないこと。」に抵触して、「遺骨遺棄罪」にあたらないのかが問題となります。
これに関して、「①海洋散骨や山林散骨のような海や山への散骨は法律的に問題ないのか?」「②空中で散骨するバルーン宇宙葬は問題ないのか?」「③結局、宇宙葬は法律的に問題ないのか?」の順に解説していきます。
宇宙葬で法律的に問題視されている点
→宇宙への散骨は墓地以外の埋葬にあたり、遺骨遺棄罪となる? |
①海や山への散骨は法律的に問題ない

遺骨の管轄である法務省、厚生労働省は「海、山への葬送は、節度ある方法であるならば法律に触れることはなく遺灰をまくことを禁ずるものはない」との見解を述べています。
よって、海洋散骨や山林散骨のような海や山へ散骨する行為は法律的に問題ありません。
②バルーン葬のような空中での散骨も問題ない

バルーンを飛ばす事に関して、管轄の環境省は「バルーンリリースを制限する意図はなく、法律で規制することはまったく考えていない」との見解を述べています。
よって、バルーン葬のような空中での散骨も問題ありません。
③宇宙葬は法律違反ではない

宇宙葬に関しては、「葬送の一つとして節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪には当たらない」というのが法務省の見解です。
よって、宇宙葬は法律違反ではありません。
宇宙葬の法律問題まとめ
※ただし、葬送の一つとして節度をもって行われる場合に限ります。 |
【まとめ】宇宙葬のデブリ・法律問題について

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いかがでしたでしょうか?
宇宙葬については、今までの葬送法と大きく違った革新的な方法であるため、様々な議論がされています。
この機会にデブリや法律的な問題に限らず、メリットやデメリットなども合わせて抑えて、理解を深めてみることをおすすめします。