「自然葬にはどんな種類があるの?」 「自然葬は法律的に大丈夫なの?」 この記事では、自然葬に関するあらゆる情報を徹底的にまとめていきます。 |
目次
自然葬とは
自然葬とは、お墓を建ててその下に埋葬するのではなく、遺灰を海や山などに散骨して自然の中に還す葬送法のことです。
様々な種類があり、共通の特徴としては「墓石を作らない」「遺骨を埋めたり、遺灰を撒く」といったことが挙げられます。
自然葬という言葉がどのようにして生まれたかについては諸説あり、大きく分けて「最終的には自然に還りたいと希望する人が増えて来たから」「環境保護のため、墓石を作らない葬送法が求められたから」の2つがあります。
なぜ今、自然葬が注目されているのか?
現在、TV・雑誌・プレジデントオンラインのようなニュースサイトなど、様々なメディアで自然葬について取り上げられることが増えてきています。
なぜ、こんなにも自然葬の人気が高まっているのでしょうか?
それは、「①お墓の承継が難しくなってきたから」「②お墓の費用を安くしたい人が増えたから」という2つの理由があるからです。
①お墓の承継が難しくなってきたから
特に地方で顕著ですが、墓守としてお墓の管理をする後継ぎが不足しています。
なぜなら、大学進学や就職を機に都会に行ってしまう人が多いので、地元のお墓を引き継ぐ子供がいないからです。
その結果、「樹木葬などの永代供養墓に埋葬して、墓地や霊園に管理を任せる方法」と「海洋散骨などを行い、そもそもお墓自体を作らない方法」の人気が高まってきました。
自然葬はお墓を作らないものがほとんどですし、仮に樹木葬で永代供養墓に埋葬したとしても管理は専門家が代わりにやってくれます。
このように、「お墓の承継」という社会的な問題の解決策として、自然葬の注目度が上がってきてるのです。
②お墓の費用を安くしたい人が増えたから
「第9回 お墓の消費者全国実態調査|いいお墓(2018年)」によると、一般墓の平均購入額は174.1万円となっています。
お墓の費用は、主に土地の使用料である「永代使用料」と、墓石の工事代・石材代である「墓石施工価格」の2つからなっており、このうち「永代使用料」の平均は62万1,782円です。
つまり、自然葬のようにお墓を作らない葬送法の場合、墓石を立てるお墓よりも100万円近くも安くなるのです。
葬儀費用とお墓の費用を合わせると300万円を超えることも珍しくないため、少しでも費用を安くしたい方が自然葬を選んでいるということですね。
表①→一般墓の平均購入額は174.1万円!
自然葬に向いている人とは?
自然葬に向いている人とは、どんな人なのでしょうか?
樹木葬や海洋散骨など、多くの自然葬はお墓を作る必要がありませんので、「お墓の承継をしなくていい」「墓石施工価格がかからないので、一般墓よりも費用が安い」といった特徴があります。
よって、「自然に還りたい」という想いを持っている人以外にも、「自分のお墓の管理を子供に任せられない人」や「できるだけ安い費用で故人の弔いをしたい人」などが自然葬に向いているといえます。
自然葬に向いている人 「自然に還りたい」という想いを持っている人 子供のいない夫婦・独身の方・子供に墓守で苦労させたくない人 お墓の費用を少しでも安くおさえたい人 |
自然葬の種類は?
自然葬という言葉は「故人の遺骨や遺灰を自然に還す葬送法」の総称です。
では、具体的に自然葬にはどんな種類があるのでしょうか?
ここからは、自然葬の一種と言われているものについて徹底的にまとめていきます。
樹木葬
自然葬の中でも、最も有名なのが樹木葬です。
樹木葬は、墓石の代わりに樹木を墓標とし、その下に故人の遺骨や遺灰を埋葬します。
樹木の下に埋葬することから自然葬のイメージにぴったりであり、自然葬と聞いてまず最初に樹木葬を思い浮かべる人も多いことでしょう。
近年、樹木葬の人気は増しており、専用の墓地・霊園が全国的に増えています。
その中には、日本人がイメージする墓地・霊園とはかけ離れた「ヨーロッパのおしゃれな庭園」に近いものもたくさんあり、女性の方にも人気が高いです。
また、墓標となる樹木に関しても緑の木々だけではなく、「鮮やかなバラの木」や「四季の変化を彩る桜の木」などもあります。
樹木葬をするためには樹木を植える必要があるため、環境へとても優しい点が社会的に評価されています。
海洋散骨
海洋散骨は、砕いた故人の遺灰を海に撒く散骨方法です。
船舶で沖まで行って散骨する方法と、ヘリコプターや軽飛行機セスナを用いて空から散骨する方法の2つがあります。
「生前の故人は海が好きだったから、海に埋葬してあげたい」「ロマンあふれる大自然の中に還りたい」といった想いを持った人に人気があります。
逆に、「海は暗いから嫌だ」という考えを持つ人もおり、樹木葬ほどメジャーな葬送法ではありません。
山林散骨
山林散骨は「山間散骨」とも言われ、読んで字のごとく山で散骨する方法のことです。
樹木葬と似ていますが、樹木葬が場所を選ばず樹木の下に埋葬する葬送法なのに対して、山林散骨では山に足を運んで地表に遺灰を巻くという違いがあります。
遺灰を自然に撒くということで、樹木葬と並んで自然葬のイメージに最も近い葬送法の1つです。
空中散骨
空中散骨には大きく分けて2つの方法があります。
1つは「ヘリコプターや軽飛行機セスナを用いて空中から遺灰を撒く方法」で、もう1つは「バルーンの中に遺灰を入れて、成層圏で破裂させて遺灰をばらまく方法」です。
後者は「バルーン葬」または「バルーン宇宙葬」などとも言われ、全国で2社しか行なっていない珍しい葬送法です。
空中で散骨された遺灰は、偏西風で運ばれて非常に広い範囲に散らばるため、空中散骨はある意味「地球全体をお墓にするサービス」とも言えます。
宇宙葬
宇宙葬とは、遺灰を入れたカプセルをロケットや人工衛星で宇宙まで持っていく葬送法です。
地球の周回軌道上に乗せて大気圏内でカプセルを燃やし、流れ星にする「流れ星供養」。
ロケットで月に着陸し、月面上に遺灰を撒く「月面葬」など、様々な種類があります。
地球外に遺灰を埋葬するため、宇宙や空全体をお墓にすることができ、数ある自然葬の中でも最も壮大でロマンがあります。
また、死後であるとはいえ、宇宙に行くことができるというのも宇宙葬の魅力の1つです。
自然葬と散骨は同じ?
ここまで自然葬の種類についてまとめてきましたが、最終的に「遺灰を散骨する」というかたちをとるものがほとんどでした。
よって、「自然葬とはつまり散骨のことではないか」と思っている人もたくさんいると思います。
これに関しては特段間違った解釈ではありません。
実際、全ての自然葬に共通する「故人の遺骨や遺灰を自然に還す」という条件を散骨は完全に満たしているからです。
結論としましては、自然葬とは狭義では「散骨」のことであり、広義では「樹木葬・火葬・土葬・風葬」なども含んだ自然へ還す葬送法全体のことを指すという解釈で大丈夫です。
なお、「樹木葬は遺灰を地面に撒いているから散骨である」という解釈もできますが、正確にはお墓の一種であり、墓石の代わりに樹木を墓標としているだけなので、散骨ではありません。
自然葬は法律的に大丈夫なの?
自然葬が散骨であるならば、法律に違反してないかという問題が出てきます。
実際、私たちが何気なく歩いているところに空から故人の遺灰が降ってきたら、「なんてことをするんだ!」と文句を言う人も多いと思います。
また、日本にある土地はほぼ全てが誰かしらのものであるために、他人の土地に勝手に遺灰を撒く行為が法律的に許されるのかについては様々な議論が交わされてきました。
ここからは、自然葬の法律的な問題についてまとめていきます。
自然葬に関する法律
自然葬に関する法律としては「墓地、埋葬等に関する法律」(通称:墓埋法)があります。
こちらには、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」と定められており、違反する行為は遺骨遺棄罪となります。
「墓地、埋葬等に関する法律」(通称:墓埋法)の概要
1.埋葬等に関する原則
(1) 墓地外の埋葬等の禁止
・ 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に行ってはならない。火葬は、火葬場以外の施設で行ってはならない。
出典:厚生労働省
自然葬の何が問題なの?
「墓地、埋葬等に関する法律」(通称:墓埋法)では、「墓地以外での埋葬」を禁じています。
よって、自然葬のように自然環境に散骨することが「墓地以外での埋葬」にあたり、遺骨遺棄罪となるのかが問題となっているのです。
自然葬は違法ではない
まず、山林散骨・海洋散骨などについてですが、法務省・厚生労働省は「海、山への葬送は、節度ある方法であるならば法律に触れることはなく遺灰をまくことを禁ずるものはない」という意味合いの見解を述べています。
また、空中散骨の一種であるバルーン葬(バルーン宇宙葬)についても、管轄の環境省は「バルーンリリースを制限する意図はなく、法律で規制することはまったく考えていない」という意味合いの見解を述べています。
よって、自然へ散骨する自然葬は法律に違反していないと解釈できます。
しかし、注意しなくてはいけないのが、違法ではないが合法でもないということです。
なぜなら、先述した中央省庁の見解は公式見解ではなく、法律にも散骨について明文化されていないからです。
つまり、自然葬は違法とする根拠がないから遺骨遺棄罪には問われないけれども、逆に積極的に合法とする根拠もないということです。
現在は自然葬についての法的な規定はありませんが、今後何かしらのかたちで法律が整備される可能性もありますので、注意が必要です。
自然葬の費用はいくら?
自然葬は墓石を建てないため、一般墓よりも格段に費用が安いと言われます。
また、樹木葬に関しても小さなプレートをつけるだけなので、墓石ほど費用はかかりません。
そんな自然葬の費用ですが、一体どのくらいなのでしょうか?
ここからは、各自然葬の費用について徹底的にまとめていきます。
樹木葬の費用
『「第9回 お墓の消費者全国実態調査」霊園墓地 購入動向|いいお墓』によると、樹木葬の平均費用は70.9万円です。
また、価格帯のボリュームで一番多かったのは「40~60万円未満」で、全体の33.3%の割合となりました。
一般墓の平均費用が174.1万円ですので、比べてみると100万近くお得だということが分かりますね。
表②→樹木葬の平均費用は70.9万円
表③→樹木葬は一般墓よりも約100万円お得!
費用の相場 | 差額 | |
樹木葬 | 70.9万円 | 約100万円 |
一般墓 | 174.1万円 |
空中散骨の費用
空中散骨の中でも、「バルーン葬」「バルーン宇宙葬」の費用についてまとめました。
価格帯は25万〜30万円前後とお安くなっており、最安価格にいたっては驚きの8万円です。
実施場所使用料・出張経費・動画撮影などを含めても50万円を切ることから、費用は一般墓の「1/5〜1/3」ほどで済みますね。
会社・サービス名 | 宇宙葬の値段・費用 |
バルーン工房
【出典】バルーン工房 |
合計:260,000円〜 |
ストーンアート工業
【出典】ストーンアート工業 |
合計:240,000円〜
合計:80,000円 |
表③→空中散骨(バルーン葬)の費用は一般墓の「1/5〜1/3」ほど!
費用の相場 | 差額 | |
空中散骨(バルーン葬) | 8万円〜26万円 | 約150万円 |
一般墓 | 174.1万円 |
宇宙葬の費用
宇宙葬の費用は、具体的にどんなプランで遺灰の中のカプセルを散骨するのかで大幅に変わってきます。
地球軌道上に乗せて最終的に流れ星にするプランなら30万〜45万円ほどで済みます。
しかし、月面で散骨したり、宇宙の果てまで行くプランでは250万円もかかってしまいます。
会社・サービス名 | 宇宙葬の値段・費用 |
宇宙葬Sorae-ソラエ
【出典】宇宙葬Sorae-ソラエ |
285,000円 (※割引適応価格です。) |
銀河ステージ
【出典】銀河ステージ |
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自然葬の5つのメリット
自然葬をすることにはどんなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、代表的な5つのメリットを紹介していきます。
①とにかく費用が安い
自然葬をすることの最大のメリットは、墓石を作るよりも格段に費用が安いことです。
一般的に平均100万円程度と言われている墓石の工事代・施工代が全くかからないので、一般墓と比べると差額の100万円分が丸々浮くことになります。
②お墓の承継をしなくていい
自然葬では墓石を作らないので、「お墓を誰に継がせるか?」という悩みを解決できます。
散骨ではない樹木葬に関しても、永代供養墓への埋葬となりますのでお墓の管理をする必要がありません。
このため、子供のいない夫婦・独身の方などに大変な人気があります。
③自然に還ることができる
自然葬ではお墓という区画に縛られることなく、大いなる自然の中で眠ることができます。
例えば、海洋散骨をすると海全体が故人のお墓となりますので、いつでも海に向かって手を合わせてお参りをすることができます。
また、空中散骨・宇宙葬にいたっては空全体が故人のお墓となりますので、星空や朝日が昇る中、家のベランダからお参りすることもできます。
「お墓に埋葬して墓石に向かって手を合わせる」という風習は、今後自然葬のシェアが伸びるにつれて減っていくかもしれませんね。
④環境に優しい
自然葬の社会的なメリットとしては、環境に非常に優しいことが挙げられます。
例えば、樹木葬をするには樹木が必要なので、必然的に新しい樹木を植えていくことになります。
また、他の自然への散骨に関しても、墓石という人工物を作らないので環境への配慮はピカイチです。
⑤故人や親族の宗派が不問
自然葬では、故人や親族の宗派が不問であることがほとんどです。
よって、どんな人でも利用することができます。
例えば、近年都心に「欧風のガーデニング庭園で行う樹木葬」が増えてきましたが、こちらもキリスト教徒である必要性は全くなく、どんな宗派の人でも利用できます。
自然葬の2つのデメリット
自然葬のデメリットにはどんなものがあるのでしょうか?
ここでは、自然葬をやるなら事前に絶対におさえておきたい2つのデメリットをご紹介します。
①散骨した遺灰の返却はできない
自然への散骨で1番問題となっているのが、散骨した遺灰が一切回収できないことです。
遺灰の一部を散骨しただけなら大した問題にはなりませんが、全てを散骨してしまった場合はトラブルの元になります。
例えば、あなたが故人の遺灰を全て散骨したとします。
そうすると、あとあと「お墓を建てることにしたので遺灰を返してほしい」「ペンダントにして手元供養したいので、遺灰の回収をお願いしたい」と言っても、肝心の遺灰はすでに自然の中に還ってしまったのでどうしようもありません。
もし、自然葬を検討しているのなら散骨する遺灰は一部にして、残りは手元に残しておくか、別のかたちで供養することをおすすめします。
②親族の理解を得ることが難しい
自然葬には「環境へ優しい」「自然に還ることができる」といったいいイメージがありますが、散骨行為への印象がよくないため親族からの理解を得ることが難しい場合があります。
それは、お墓がないと、「どこで故人のことを思ってお参りすればいいのか分からない」という悩みを抱える人がいるからです。
仮に親族の全員から理解を得られても、生前の故人と仲が良かった友人から「どうしてお墓を作らないんだ!」「お墓を作らないなんてかわいそう・・・。」などと言われる可能性もあります。
生前の故人が社会的に地位がある人だったり、友人がたくさんいる場合には、やはりきちんとしたお墓を建てた方がいいでしょう。
【まとめ】自然葬(海・山・空・宇宙への埋葬)について
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自然葬には多くの種類がありますが、社会的な認知度や利用実績を見ると「樹木葬」が頭一つ抜けています。
それはやはり、自然葬の中で唯一お墓を作る葬送法だからでしょう。
散骨は非常に費用が安い葬送法ではありますが、トラブルの報告なども多いため、まだまだ理解を得られているとは言えない状況です。
もし、自然葬に興味があるなら、まずは樹木葬からご検討ください。
参考までに、下記に樹木葬を簡単に比較できる専用のポータルサイトを掲載しておきます。
どちらも非常に有名な樹木葬墓地紹介サービスであるため、多くの利用者がこのサイトを経由して樹木葬を購入しています。
ポータルサイト名 | 特徴 |
①いいお墓
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良い点
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悪い点
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②お墓さがし
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良い点
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悪い点
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