「海洋散骨は違法ではないのか?」 「違法でないと言われているけど、その法律的根拠は何なの?」 この記事では、海洋散骨の違法性について争点・結論・根拠の3つに注目して紹介していきます。 |
目次
海洋散骨は違法ではない
海洋散骨を含む散骨行為の違法性については、昔から何度も議論が交わされてきました。
問題となっているのは、「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」と「刑法第190条」の条文に散骨が抵触して、遺骨遺棄罪・死体遺棄罪などに問われないかという点です。
結論から申しますと、現在海洋散骨は違法ではありません。
ここからはその根拠について徹底的にまとめていきます。
海洋散骨は「墓埋法第4条」に抵触しない
墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)の第4条には、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。」とあります。
ここで問題となっているのは、散骨行為が「墓地以外の区域への埋葬」にあたり、遺骨遺棄罪に問われてしまうのかどうかという点です。
この争点に対して、厚生省(現厚生労働省)は「墓地埋葬等による法律(墓埋法)第4条はもともと火葬や遺体の埋葬(=土葬)や遺骨の埋蔵を対象としていて、散骨という撒く葬法は想定していない。」という意味合いの非公式見解を述べています。
つまり、「墓埋法は散骨について規定してないから違法とする根拠がない」、それゆえに合法であるということですね。
よって、現在では散骨は「墓埋法第4条」に抵触せず、遺骨遺棄罪に問われないとされています。
墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)
第4条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
出典:厚生労働省
まとめ
少々難しい議論が続きましたので、以下にどんな問題があって、海洋散骨が合法である根拠は結局何なのかについてまとめておきます。
■ 問題とされている点
- 「散骨=墓地以外の区域への埋葬(墓埋法第4条)」となり、遺骨遺棄罪に問われる?
■ 結論
- 海洋散骨は合法
■ 合法である理由
- 厚生省(現厚生労働省)の非公式見解:「散骨については対象外!」
- →違法とする根拠がないから、散骨は合法!
海洋散骨は「刑法第190条」に抵触しない
刑法第190条には、「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。」とあります。
ここで問題となっているのは、遺骨を粉末状にする散骨行為が刑法第190条の規定する「遺骨の損壊・遺棄」にあたり、死体遺棄罪に問われるのかどうかです。
この争点に対して、法務省は「刑法190条の遺骨遺棄罪の規定は、社会的風俗としての宗教的感情を保護するのが目的であり、葬送の目的として、相当の節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪にはあたらない」という意味合いの非公式見解を述べています。
つまり、散骨はきちんとマナーを守って行えば死体遺棄罪に問われることはないということですね。
よって、現在では散骨は「刑法第190条」に抵触せず、死体遺棄罪に問われないとされています。
刑法第190条
第190条
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。
出典:刑法第190条
まとめ
少々難しい議論が続きましたので、以下にどんな問題があって、海洋散骨が合法である根拠は結局何なのかについてまとめておきます。
■ 問題とされている点
- 「散骨=遺骨の損壊・遺棄」となり、死体遺棄罪に問われる?
■ 結論
- 海洋散骨は合法
■ 合法である理由
- 法務省の非公式見解:「きちんとマナーを守って行えば、散骨は合法!」
海洋散骨の違法性における4つの注意点
ここまで、海洋散骨は墓埋法第4条・刑法第190条に抵触せず、遺骨遺棄罪・死体遺棄罪に問われないことが分かりました。
しかし、海洋散骨を含む散骨行為は違法ではありませんが、だからといって絶対に合法であるともいえないのです。
ここからは、散骨が違法でもなく合法でもないグレーの状態である3つの理由についてまとめていきます。
注意点①中央省庁の見解はあくまでも非公式
先述した通り、散骨が一応が合法であるとされる根拠は厚生省と法務省の見解にありました。
しかし、この見解については「公式であるとまではいえない」と後に発表されているなど、その信頼性については不確かな部分が多々あります。
実際、この見解は当時ヒアリングした機関が後に主観的にまとめたとされていますので、一言一句あっているともいえず、また公開されている原文もありません。
そのため、ネットでこの件の公式見解について検索しても一切見つからないのです。
このように、現在散骨が合法とされている根拠は信頼性が不確かであり、今後何かのきっかけで解釈が変わってしまう可能性があります。
注意点②今後、海洋散骨について規定した法律ができる可能性がある
散骨は非常に新しい葬送法なので、現在の大部分の法律が作られた何十年も前には存在していませんでした。
つまり、散骨が違法でないのは、新しいがゆえにそれについて規定した法律の制定が間に合ってないだけともいえるのです。
例えば、今後散骨でトラブルが多発して社会的に問題視されるようになれば、散骨が違法であると規定した法律が生まれる可能性があります。
あくまでも法律という「違法とする根拠」がないだけで、散骨自体は今だに合法とはいえないグレーゾーンにあるということを忘れてはいけません。
■ なぜ、現在まで法律が制定されていない?
散骨がグレーであることは、違法と合法との基準が曖昧となってしまうので社会的にもよくありません。
しかし、昔から様々な議論が交わされてきたにも関わらず、2018年6月現在でも散骨について規定した法律は存在しません。
これは散骨について規定することが「遺骨・遺灰の取り扱いという宗教的な制限」にあたるため、憲法の「信教の自由」に違反してしまう可能性があるからです。
つまり、法律が制定されていないのでは、時間がかかっているのではなく、わざとグレーのまま放置しているかもしれないということです。
注意点③海洋散骨が合法なのは「節度」を守っているときだけ
法務省は散骨に対して、「節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪にはあたらない」という意味合いの非公式見解を述べています。
逆にいえば、節度を守らない散骨行為はマナー違反となり、何かしらの罪に問われる可能性があります。
では、ここでいう「節度」とは具体的に何を指すのでしょうか?
実をいうと、この「節度」に関して明確な解釈は存在しません。
しかし、一般的には「遺骨のまま散布せず、2mm程度以下の粉末状の遺灰にして散骨すること」「葬送という目的があり、環境問題や他人の土地への配慮を欠かさないこと」を守ることを要求しているとされます。
■ 法務省の見解における「節度をもって」とは?
- 遺骨のまま散布せず、2mm程度以下の粉末状の遺灰にして散骨すること
- 葬送という目的があり、環境問題や他人の土地への配慮を欠かさないこと
注意点④ガイドラインに違反する海洋散骨業者がいる
海洋散骨に関する指針としては、一般社団法人日本海洋散骨協会が定めた「海洋散骨ガイドライン」があります。
海洋散骨は法的な規定が存在せず、業者によって自由に行うことができます。
そこで、中央省庁の見解に沿うように海洋散骨が行われるように、業界として守るべき指針が自主的に作られたのです。
現在、このガイドラインを守る加盟事業者は36団体ありますが、世の中にはこのガイドラインを一切守らない悪質な業者も存在します。
万が一悪質な業者に依頼してしまった場合、罪に問われるのはあなたの方かもしれません。
よって、海洋散骨をする際には、ガイドラインを守る優良事業者であるかどうかを必ずご確認ください。
【まとめ】海洋散骨の違法性・法律的な問題について
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