「海洋散骨をする上で、どんな許可や手続きが必要になるの?」 この記事では、海洋散骨の許可や手続き、条例やトラブルの事例などについて徹底的にまとめていきます。 |
目次
海洋散骨に許可や手続きはいらない
海洋散骨をする上でよく議論に上がるのが、公的機関の許可や何かしらの手続きが必要なのかということです。
結論から申しますと、これらの許可や手続きは必要ありません。
なぜなら、そもそも散骨について規定した法律が存在せず、管轄する中央省庁も存在しないからです。
よく挙げられる争点として、「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)の第4条」と「刑法第190条」の条文に散骨が抵触しないのかというものがあります。
しかし、これらの争点に関しては法務省と厚生省(現厚労省)の非公式見解を根拠に、散骨については規定の対象外で違法ではないとしています。
よって、2018年6月現在では、海洋散骨にする上で何かしらの書類や手続きが必要になったり、公的機関から許可を得る必要はありません。
■ 結論
海洋散骨に許可や手続きはいらない
■ 理由
海洋散骨について規定する法律が存在せず、この問題を管轄する公的機関もないから
海洋散骨の許可には2種類ある
海洋散骨の許可としては、「依頼する消費者側の許可」と「依頼を受ける業者側の許可」の2種類があります。
先述した通り、海洋散骨をする上で許可や手続きは必要ないので、どちらも「法的には許可はいらない」という点は共通しています。
しかし、許可について詳しく見てみると、依頼する側と依頼される側とでは意味合いがだいぶ違ってきます。
そこで、ここからは海洋散骨の許可についてもう少し詳しく解説していきます。
①依頼する「消費者」側の許可
依頼する「消費者」側の許可とは、海洋散骨をしてもらう上で「事前にもらっておかなければならない許可はあるのか」という意味合いを指します。
海洋散骨には「遺骨を最低でも2mm以下の粉末状にする」「葬送という目的の上で行う」といった細かいマナーがあります。
個人で散骨を行うこともできなくはないですが、多くの方は海洋散骨を行うときには業者に依頼することでしょう。
この際、事前に必要な書類を整えたり、公的機関から許可を得る必要があるのかが疑問に上がりますが、先述した通り許可を得る必要はありません。
しかし、遺骨の身元を確認するために、業者から「火葬許可証のコピー」または「埋葬許可証」の提出を求められる可能性があります。
業者としても余計なトラブルを起こさないために、仕方なくやっているということですね。
■ 火葬許可証
死亡届を提出した後に役所から発行してもらう火葬の許可証
■ 埋葬許可証
火葬場に火葬許可証を提出した後に、お墓や納骨堂に埋葬するために必要となる許可証
お墓から遺骨を取り出して海洋散骨をする場合は要注意
多くの場合、海洋散骨は火葬後に残った焼骨をそのまま業者に頼んで実施するかたちがほとんどです。
しかし、中には一度墓地や霊園のお墓に故人の遺骨を埋葬して、その後取り出してから海洋散骨を行うケースもあります。
これは見方によっては「遺骨のお引越し」となりますので、規定によって市区町村の改葬許可証が必要になる可能性があります。
一般的に、墓地や霊園・納骨堂に埋葬されている遺骨を他のお墓に移す際には必ず改葬許可証が必要ですが、海洋散骨に関しては「海全体をお墓にする」と見るか、「お墓がないので移転先はなし」と見るかで解釈が分かれます。
つまり、「改葬許可証」が必要になるかどうかは、墓地や霊園の管理者・業者の方が「遺骨のお引越し」と見るかどうかで決まるということです。
■ 改葬許可証
現在埋葬している遺骨を他の墓地・霊園にあるお墓に移すときに必要になる許可証
まとめ
海洋散骨の許可や手続きについて情報量が多くなったので、以下に簡単にまとめておきます。
■ 法的に必要な許可や手続き
一切なし
■ 海洋散骨をする上で業者に求められるかもしれない書類
遺骨の身元確認用の「火葬許可証のコピー」または「埋葬許可証」
■ お墓や納骨堂から遺骨を取り出す際に必要になるかもしれない書類
「改葬許可証」
②依頼を受ける「業者」側の許可
依頼を受ける「業者」側の許可とは、海洋散骨を行う業者が「業務を行う上で必要になる許可」があるのかどうかということです。
お酒の販売をする上で許可が必要なのと同じように、海洋散骨に関しても営業上必要になる許可はあるのかということが疑問に挙がります。
結論から申しますと、こちらの許可に関しても必要はありません。
これは少し意外な結果に思えるかもしれませんが、れっきとした事実です。
ただ、許可制でないために悪徳業者が存在したり、「危うく依頼した自分が遺骨遺棄罪に問われてしまうところだった」なんてケースもあります。
海洋散骨ガイドラインについて
海洋散骨に関しては、法的なルールが存在しないために業界全体として無法地帯になる可能性があります。
このような事態を防ぐために、一般社団法人日本海洋散骨協会は「海洋散骨ガイドライン」を定めました。
これにより、加盟事業者は最低限どのようなことを守るべきかについて共通の認識を持つことができました。
また、加盟事業者は海洋散骨を行う業者として、「自分たちは公的な見解を遵守している」と客観的な信頼を確保することもできたのです。
海洋散骨を制限する条例について
海洋散骨について国全体で規定する法律はありませんが、地域ごとに条例で制限している例はあります。
ここでは、その具体的事例を3つ紹介します。
■ 北海道長沼町の条例
第11条 何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。
出典:長沼町さわやか環境づくり条例(平成17年3月16日条例第10号)
■ 北海道七飯町の条例
七飯町内において事業者による法定外の葬法が提起された場合を想定し、平成 18年 4月1日に 正式に施行された。
出典:散骨に関する条例との状況
■ 埼玉県本庄市の条例
平成 22年 3月 31日条例第 1号として「本庄市散骨場の設置等の適正化に関する条例」が制定・ 施行されている。
出典:散骨に関する条例との状況
海洋散骨でよくあるトラブル2選!
海洋散骨は事前に許可を得る必要はありませんが、だからといって気を抜いていると思わぬトラブルに遭遇してしまいます。
ここでは、気をつけておきたい海洋散骨の2つのトラブルについてまとめていきます。
①船舶代金を追加で請求された!
海洋散骨は民事トラブルを避けるために、沿岸から離れた沖で行われます。
この際に、往復の移動費用を本来の料金プランとは別で請求される可能性があります。
海上での移動距離など依頼者には分かるはずもないので、そこを突いて高額な追加費用を請求する悪質な業者も存在するということです。
海洋散骨をする際には、事前に詳細な見積書を作ってもらうだけでなく、船舶の移動費用についてもしっかりとヒアリングしておきましょう。
②遺骨を海に置いてしまった!
かなりレアなケースではありますが、海洋散骨を業者に依頼せずに自力で行う場合、遺骨を2mm以下の粉末状にせずにそのまま置いてしまうことがあります。
法務省は「相当の節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪にはあたらない」という見解を示しており、これより海洋散骨を行う際には最低限のマナーを守る必要があります。
ここでいう「節度」を守ったマナーとは、遺骨をそのまま置かないできちんとパウダー状にすることです。
当たり前のことですが、海水浴に来たお客さんが砂浜に置いてある「死を連想させる遺骨」を見たら大騒ぎになります。
業者に任せることが一番ですが、万が一海洋散骨を自力で行うなら「節度」は守りましょう。
海洋散骨をしてもいい場所とは?
「沿岸地帯」や「漁業権のある海域」、「海水浴場などの観光エリア」で海洋散骨を行うことはできません。
万が一行ってしまうと、観光客や組合などに訴えられて民事トラブルに巻き込まれてしまう可能性があるからです。
粉末状にしたとはいえ、遺灰は死を連想させるものであるため、人によっては理解を得ることが難しい代物です。
海洋散骨は「沿岸地帯から遠く離れた沖合」のような、誰にも迷惑のかからない海上で行うことがマナーです。
表①→海洋散骨は沿岸地帯から離れた沖合で行う!
海洋散骨を行っていいエリアについて | |
沿岸地帯 | NG! |
漁業権のある海域 | NG! |
海水浴場などの観光エリア | NG! |
上記以外の沿岸地帯から遠く離れた沖合 | OK! |
【まとめ】海洋散骨の許可・手続きについて
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