【葬儀費用】相続財産から支払うことはできる?根拠・手順・注意点を徹底的に調べてみました

日本消費者協会が2017年に行った「第11回『葬儀についてのアンケート調査』報告書」によると、葬儀費用の全国平均は195.7万円です。

この莫大な金額を相続財産から支払うことができるのかどうかは、喪主や相続人の最大の関心事ですよね。

本記事では、法律上の難しい解釈が絡むこのトピックをどこよりも分かりやすく解説していきます。

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24歳の終活カウンセラー。Amazonで終活関係の本を20冊以上購入し、電車の中で毎日読む生活を4ヶ月以上継続中。最近はまっている趣味は「マインドフルネス(瞑想)」。人生に疲れたら、お寺に行って座禅修行する予定。

葬儀費用は相続財産から支払うことができるのか?

葬儀に関して疑問を感じている男性

結論から言いますと、葬儀費用は相続財産から支払うことができます。

とはいえ、これだけ伝えても「本当にできるの・・・?」と感じてしまい、実際に葬儀をする時も不安を抱えたままになってしまうと思います。

ここからは「支払うことができる」ことの根拠をどこよりも分かりやすく解説していきますので、合わせて覚えていただきたいと思います。

まず抑えるべきは、「葬儀費用は誰が負担すべきものなのか?」についてです。

被相続人や相続人が支払うものなら相続財産から支払っていいはずですし、喪主が支払うべきなのなら相続財産から支払っていいはずです。

要点をまとめると以下の表のようになります。

葬儀費用は誰が負担する? 相続財産からの支払いはOK?
被相続人(亡くなった身内の人) OK
喪主 原則:NG

例外:他の相続人との間で合意があった場合

相続人 OK

つまり、葬儀費用を相続財産から支払っていいのかどうかは、「誰が負担するのか?」で決まります。

では、この件に関して法律ではどう解釈されているのでしょうか?

相続財産から支払う葬儀費用に関しての判例は、以下の3つの種類があります。

相続財産から支払う葬儀費用に関する判例上の3つの解釈

  • 最有力の考え方
    • 喪主を負担者とする考え方(名古屋高裁平成24年3月29日判決など)
  • その他の考え方
    • 相続財産の負担とする考え方(東京家審昭和33年7月4日家月10巻8号36頁など)
    • 相続人に法定相続分に応じて分割承継されるとの考え方(東京高決昭和30年9月5日家月7巻11号57頁など)

この3つの解釈の中で最も有力なのは、「喪主を負担者とする考え方」です。

よって、葬儀費用は、民法885条の「相続財産に関する費用」にあたらず、相続財産からの支払いができないということになります。

もともと相続財産とは、「故人からの相続発生時(=故人の死亡時)に故人が保有していた財産・債務」のことなので、「死亡後に発生した債務である葬儀費用は相続財産にあたらない」という解釈は妥当といえるでしょう。

→「葬儀費用の負担」について、より詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

  • 相続財産
    • 故人(=身内の亡くなった人)の「死亡時」に、故人が保有していた財産・債務のこと
  • 葬儀費用
    • 故人の「死亡後」に発生した債務

→「死亡後」に発生した葬儀費用(債務)は、「死亡時」に故人が持っていた相続財産(財産・債務)ではない!

よって、葬儀費用は「原則」相続財産から支払えないと判例は解釈している

しかし、実際には相続財産から葬儀費用を支払うケースは多い

葬儀費用を相続財産から支払えることに驚いている男性

先ほど、「葬儀費用は相続財産から支払えない」と判例は(原則)解釈していると言いましたが、実際の葬儀では「葬儀費用を相続財産から支払うケース」は普通にあります。

「判例で(原則)ダメと言っているのに大丈夫なの?」と疑問に思うかもしれませんが、これにもきちんとした理由があります。

現在、多くの人は通夜や告別式の参列者から頂いた香典を葬儀費用の支払いにあてています。

日本消費者協会が2017年に行った「第11回『葬儀についてのアンケート調査』報告書」によると、葬儀費用の全国平均は195.7万円です。

また、香典に関しては、鎌倉新書が2013 年 11 月 11 日~11 月 14 日に行った「第一回お葬式に関する全国調査」によると、参列者から頂いた香典の総額として最も多いのは20万円未満でした。

つまり、頂いた香典を全額葬儀費用に当てても、まだ170万以上を負担しなければならない現実があるのです。

このような中で「葬儀費用を支払えないから葬儀を行えない!」という方を少しでも減らすために、社会通念上仕方なく「葬儀費用を相続財産から支払うこと」を認めているのです。

判例の解釈上は「葬儀費用は相続財産から支払えない」けれども、「法律できちんと明文化はされてないからセーフ!」ということですね。

【葬儀費用を相続財産から支払うことができるか?】

結論:判例は「原則」否定しているが、社会通念上認めざるを得ないので、

「例外的」に葬儀費用を相続財産から支払うことを認めている!

葬儀費用を相続財産から支払う際の注意点

葬儀に関して注意をする男性

葬儀費用を相続財産から支払う際には、他の相続人との間に合意が必要です。

これは、有力説である「名古屋高裁平成24年3月29日判決」の判例から読み取れます。

名古屋高裁平成24年3月29日判決の解釈

  • 葬儀費用の負担について
    • 原則:喪主が負担する
    • 例外:相続人の間で「葬儀費用を誰がいくら負担するのか」の合意があれば、そちらを優先する

相続人が多い場合は調整が大変ですので、可能ならば葬儀前にきちんと合意を得ておきたいですね。

葬儀費用を相続財産から支払う際の手順まとめ

葬儀に関するポイントをまとめている女性

前項までで、葬儀費用は相続財産から支払うことができるということが分かりました。

ここからは、「実際にどのように支払えばいいのか?」が気になる方のために、支払う際の手順をご紹介します。

手順①相続人全員と連絡を取ろう

葬儀費用を相続財産から支払うためには、相続人全員の合意が必要です。

あらかじめ合意を得ている場合は別ですが、身内の葬儀はある日突然起こるものですので、ほとんどの場合は事前の合意を得られていないでしょう。

そこでまずは、相続人全員と連絡を取って「相続財産から葬儀費用を支払うこと」に対して合意を得ましょう。

具体的には、

  1. 葬儀社からの見積書を開示する
  2. 相続人全員から支出に対する了解を得る
  3. 葬儀費用に関する領主書を残す

という手順で進めていけば大丈夫です。

手順②金融機関に確認して預貯金を引き出す

金融機関と話し合いをしている女性

次にやるべきなのは、金融機関に確認して預貯金を引き出すことです。

大多数の方が葬儀費用という突然の出費に対して預貯金を頼ることになると思いますが、ここでは「口座の凍結」に気をつける必要があります。

一般的に銀行は、口座名義人の死亡後にその人の口座を凍結して、口座からの引き出しなどの各種取引を行えないようにします。

それは、口座名義人が死亡すると、その人の預金が相続人全員のものとなるので、トラブル回避のためにきちんと合意を取った上での引き出し以外に応じないようにするためです。

引き出しの際には「本人確認」が必要なので、下記の書類を用意しておきましょう。

必要書類まとめ(銀行の場合)

  • ア:故人の戸籍謄本又は除籍謄本 (法定相続人の範囲を示すもの。除籍謄本の発行は役所での死亡届受理から2週間前後になります。役所へ問い合わせてみましょう)
  • イ:法定相続人全員の戸籍謄本   (3カ月以内)
  • ウ:法定相続人全員の印鑑証明書 (3カ月以内)
  • エ:支払目的がある場合は、見積書や請求書(葬儀代・医療代など)
  • オ:銀行の必要書類(法定相続人の同意書等・直筆の署名・実印の捺印)※銀行へ問い合わせてみましょう。
  • カ:手続き代表者の本人確認書類(運転免許書やパスポート・健康保険証等)
  • キ:手続き代理人は、故人の実印・預金通帳・通帳の届出印・キャッシュカードを持参

※その他、代理人の実印・認め印も必要な事がありますので、銀行へ問い合わせてみましょう。

【出典】ベリーベスト法律事務所がお届けする「使える!役立つ!」法律情報サイト

なお、必要書類は金融機関によって違う場合もあるので、あらかじめ口座名義人の利用していた金融機関に問い合わせしておくことをオススメします。

まとめ

葬儀のポイントをまとめている女性
  • 葬儀費用は相続人全員の「合意」があれば、相続財産から支払うことができる

いかがでしたでしょうか?

今回は、葬儀費用を相続財産から支払うことはできる根拠と手順・注意点についてご紹介しました。

全国平均195.7万円(「第11回『葬儀についてのアンケート調査』報告書」|日本消費者協会 より)もの葬儀費用をポンっと用意するのは大変です。

葬儀費用は相続財産から支払えますので、制度をうまく使いましょう。

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24歳の終活カウンセラー。Amazonで終活関係の本を20冊以上購入し、電車の中で毎日読む生活を4ヶ月以上継続中。最近はまっている趣味は「マインドフルネス(瞑想)」。人生に疲れたら、お寺に行って座禅修行する予定。