葬儀費用の控除について詳しくなれば、相続税を大幅に減らすことができます。
控除と聞くと、「税金が絡むから難しそう・・・。」と思ってしまいがちですが、実は抑えるポイントは少ししかありません。
この記事では、葬儀費用の負担を少しでも減らすために葬儀前に知っておきたい控除の対象・注意点・申告期間についてどこよりも分かりやすく解説します。
目次
葬儀費用の控除の仕組みを知れば相続税を大幅に減らすことができます
最初に相続財産と葬儀費用の関係について全体像を説明します。
まず抑えてほしいのは、
- 葬儀費用は故人の相続財産から支払うことができる
- 葬儀費用として使った相続財産には、相続税がかからない(相続税が控除される)
ということです。
そもそも税金には、「控除」という実際の納税負担を減らすための仕組みがあります。
控除とは、あらかじめ課税される対象金額を減らすことで、税金の支払いを少なくすることができる制度のことです。
葬儀費用に関する控除でよく議論されるのが
- 所得に対する控除
- 相続財産に対する控除
の2つです。
葬儀費用は所得ではないため、所得に対する控除は適用されません。
しかし、葬儀費用は相続財産から支払うことが可能なため、相続財産に対する控除を受けることができます。
つまり、葬儀費用を相続財産から支払えば相続税の納税額が減るため、実際の納税負担を軽くすることができるのです。
これについて、表を用いて分かりやすく解説します。
以下の2つの情報を下に、①葬儀費用を相続財産から支払った場合と②葬儀費用を相続財産から支払わなかった場合とで、相続税がどれだけ変わるのかをシミュレートしてみましょう。
※旭化成ホームズ株式会社が平成25年に実施した「親と子の財産相続に関する意識調査」によると、65歳以上シニアが所有する、相続対象の資産総額は平均で約4743.3万円
※日本消費者協会が2017年に行った「第11回『葬儀についてのアンケート調査』報告書」によると、葬儀費用の平均は195.7万円
①葬儀費用を相続財産から支払った場合
相続財産
4743.3万円 |
|
その他
4547.6万円 |
葬儀費用
195.7万円 |
黒く塗りつぶしたエリアが相続税の課税範囲です。
先ほども申し上げた通り、葬儀費用として使った相続財産には、相続税がかかりません。(葬儀費用が控除される)
つまり、この場合相続税の対象額は4547.6万円だけとなります。
では、実際に納める相続税はいくらになるのでしょうか?
「国税庁 No.4152 相続税の計算」・「国税庁 No.4155 相続税の税率」を参考に計算してみました。
■相続税の計算式
配偶者・子供1人のケース(※自分が配偶者として)
課税価格の合計額 - 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)
= 課税遺産総額課税遺産総額×1/2×税率=相続税
■葬儀費用を相続財産から支払った場合
課税価格の合計額(4547.6万円) - 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 2)
= 課税遺産総額(347.6万円)課税遺産総額(347.6万円)×1/2×税率(10%)=相続税(17.38万円)=約17万円
②葬儀費用を相続財産から支払わなかった場合
相続財産
4743.3万円 |
黒く塗りつぶしたエリアが相続税の課税範囲です。
葬儀費用として使った相続財産がありませんので、控除される税額はゼロとなります。
つまり、この場合相続税の対象額は4743.3万円全てとなります。
■葬儀費用を相続財産から支払わなかった場合
課税価格の合計額(4743.3万円) - 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 2)
= 課税遺産総額(543.3万円)課税遺産総額(543.3万円)×1/2×税率(10%)=相続税(27.165万円)=約27万円
ここまでの計算結果をまとめますと、以下のようになります。
相続財産 | 課税遺産総額 | 相続税 | |
①葬儀費用を相続財産から支払った場合 | 4547.6万円 | 347.6万円 | 約17万円 |
②葬儀費用を相続財産から支払わなかった場合 | 4743.3万円 | 543.3万円 | 約27万円 |
葬儀費用を相続財産から支払うことで、約10万円の相続税を節約できるという結果が出ました。
税金の負担を少しでも減らすためにも、葬儀費用は相続財産から支払うべきですね。
どんな費用が葬儀費用にあたるのか?
国税庁によると、相続財産から控除できる葬式費用となるもの・ならないものは以下の通りです。
葬式費用となるもの | 葬式費用に含まれないもの |
(1) 葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。) | (1) 香典返しのためにかかった費用 |
(2) 遺体や遺骨の回送にかかった費用 | (2) 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用 |
(3) 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。) | (3) 初七日や法事などのためにかかった費用 |
(4) 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用 | |
(5) 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用 |
要点を簡単にまとめますと、以下のようになります。
- 葬式費用となるもの
- 故人がなくなってから行う「通夜・告別式・火葬」までにかかる必要経費
- 葬式費用に含まれないもの
- 火葬が終わってから行う「初七日法要」以降にかかるほとんどの費用(納骨代などは別)
葬儀費用の控除をする際の2つの注意点
葬儀社に必ず領収書を発行してもらおう
葬儀費用の控除をしてもらう際の一連の手続きは以下の通りです。
- 葬儀を依頼した葬儀社に領収書を発行してもらう
- 税務署に行く
- 相続税の申告書にある「葬式費用の明細」欄に、葬儀費用の支払先や費用を記入する
- 相続税の申告書を提出する
葬儀費用を控除してもらう際には「領収書」が必要なので、必ず葬儀社に発行してもらいましょう。
また、葬儀社と違ってお寺は領収書を発行しませんので、お布施代に関しては
- 支払日
- 支払った相手先(寺院など)
- 支払った目的(お布施代など)
- 支払い金額
の4つを書いたメモを自分で控えておきましょう。
10ヶ月という申告・納税期間を守ろう
国税庁によると、相続税の申告・納税期間は10ヶ月以内となっています。
相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。
相続税の納税は、上記の申告期限までに行うことになっています。
【出典】相続税の申告と納税|国税庁
葬儀費用の控除を受けるために、必ず期限を守るようにしましょう。
まとめ
- 葬儀費用を相続財産から支払えば相続税の納税額が減るため、実際の納税負担を軽くすることができる
- 葬儀費用の控除をする際の2つの注意点
- 葬儀社に必ず領収書を発行してもらう
- 10ヶ月という申告・納税期間を守る
いかがでしたでしょうか?
今回は、葬儀費用における控除の対象・注意点・申告期間について解説していきました。
一見難しく感じてしまう「葬儀費用の控除」に関しても、抑えるポイントは少ししかありません。
控除制度をうまく利用して、相続税の支払いを少しでも抑えましょう。